残りの日々を楽しく

そろそろ終活の季節になってきました。残りの人生を前向きに生きていきたいと願って名づけました。

日本の少子化対策について

山田昌弘著「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」光文社新書1067、2020年5月発行の紹介です。副題は「結婚・出産が回避される本当の原因」です。

山田さんは、日本の少子化について、欧米とアジア諸国の反応について興味深いことを述べています。それは、欧米からは「なぜ、日本政府は少子化対策をしてこなかったのか」という疑問で、言葉を換えれば、「30年以上も前から少子化が進行しているのに、出生率の回復に向けた有効な対策が打たれないのは、日本はなんという脳天気な国なんだろう」ということです。

一方、中国や韓国、シンガポールなどの人たちは、「日本のようにならないためにはどうすればよいのか」という点を聞いてくるそうです。なぜなら、アジア諸国少子化が深刻化したのは最近のことで、今から対策をすれば、日本のように人口減少に見舞われなくても済むのではないか、日本並みの高齢化率になるのは避けられるのではないか、と考えているからだそうです。

高齢者福祉を仕事にしてきた自分(吉田)で、日本の介護保険はすばらしい、韓国もそれを見習っているという程度の認識しかなかったのですが、もっと根本のところから高齢者福祉も考えないと、とんでもない間違いをしてしまいそうです。山田さんの専門は家族社会学で、その一連の著作は、日本の社会の流れをとてもわかりやすく解説してくれます。

この本で、著者が言いたかったことは、日本の少子化政策が的外れであった点を指摘することで、結論を簡単に言えば、「未婚化」と「若者の経済力の格差拡大」という要因です。

若者は、上の世代を見ている。10年前に非正規雇用になった若者、不安定な中で子育てをしている中年世代、そして貧困化する高齢者を見ている。そうならないために、結婚や出産に慎重になっている。

少子化対策に有効なのは、今の若者が、10年後、結婚して子育てをしているとき、20年後、子どもが大学に上がるようになったとき、そして、30年後、高齢者になったときに、世間並みの生活ができるという期待をもたせなければならない。

しかし、私(吉田)は、今の政治状況では、格差社会が進展し、格差が若者だけでなく、中高年に及ぶような「新階級社会」になっていくような気がします。