平成25年(2013年)3月の「あとがき」で次のように述べている。
郷土の田布施町には、山頭火のデビュー時代の句友であった江良碧松が創始した「周防一夜会」という伝統ある自由律俳句の会がある。私が退職して郷里に帰り、この会があることを知って入門したのが俳句との出会いである。57歳という遅咲きではあるが、継続は力なりということばを信じ、一日三句を作ることを目標に作句を続けている。
俳句は大きな目で見れば、詩のジャンルに属するものであるから、ポエジーを何より大切にし、私なりの叙情の世界を作り上げたいというのが願いであるが、まだ志半ばとまでも言えぬ状態であり、これからも精進を続けたいと思っている。
内容は、5つに分かれており、その300句の中からすこし紹介します。
「風の卵」 平成4年~11年
淋しいので あたたか~いのボタンを押す
今年も生きて夏を大の字に寝る
らくに死にたいとらくに生きている
でも何もしない口がああだこうだ
「走り雨」 平成12年~14年
ふんわり生きたい足がおもたい
ハンガーが夕べの疲れぶらさげている
「春の石」 平成15年~16年
もうでもなく未だでもなく生きてこの秋
耳掻き棒 脳の痒さにとどかない
うかうかと春の石につまずく
道も家並みも小さくなって ここがふるさと
錆びついた人生のキーキー鳴る自転車だ
舌打ちして苦笑いして自分を動かす
「花と鳥」 平成17年~18年
芸無しの持つ たった一つの生きるという芸
生きるに飽き春にとまどい どっこいしょ
もう笑うしかない歳のせいという病気だ
老いて無職という名の天職と持つ
今日もガンバローと拳つきあげて笑う妻
「露の命」 平成19年~20年
椿きっちり咲ききって落ちるその日まで
未来はきっと変えられるスコップ踏み込む
その時までを懸命に這う虫のいのち
泣いたことも笑ったこのもみんな年輪
読めない空気は読まず楽に生きる
分別をいう邪魔ものあって面白くもなし
飛ぶ虫と這う虫、それぞれの時間がある
鳴き終えた蝉ころりとあおむいている
わたしの背中に貼られている札が見えない