木村緑平「雀の生涯」から、(昭和四十三年)一月四日の日記より。
晴、よい晴れである。
そしてあたたかである。
北島さんで屠蘇をいただく、屠蘇は何となく正月気分にしてくれる、年の暮に焼き捨てたが反故や紙屑がまた籠に一杯になっているので庭で焼く、白い煙になって消えゆく、一切空、
あちこちから到来した餅を漬餅にする、餅のような句を作って見たいな、石ころのような句、土塊のような句そんな句が緑平にはふさわしいようだ。
初風呂が湧いた、ずんぶり首まで浸って81まで生きのびた人生をしみじみ味う。
三日過ぎ雀たちも麦の畑に出ている
八十一似合うて来た前垂で手をふく
新どん一つ年とるとひとりで逝ってしまった
とむらいからもどり急いで病人の粥つくる