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そろそろ終活の季節になってきました。残りの人生を前向きに生きていきたいと願って名づけました。

ワカの本質に迫る~日本のこころ・素直さ~

『合本ほつま』から、水上雅雄(みつかみ まさを)さんの「ワカの本質に迫る~日本のこころ・素直さ~」を取り上げます。

・はじめに

・佐々木信綱の和歌論

・『ホツマ』の歌論

・歌の道

・素直な心

・祖先の祈り

・おわりに

 

 『ホツマ』は景行天皇55年(西暦125年)にオオタタネコの命が景行天皇に奉呈した長歌形式一万行の日本国の歴史書である。全40アヤ(章)からなるが、1アヤから28アヤまでは、神武天皇(紀元前659年~581年)の右の臣クシミカタマの命が太古から伝わる各種のフミを元にして執筆し、ゆかりの神社に残しておいたものである。当時の国家第一の文書である『ホツマ』の冒頭に和歌の記述を配したことに注目したい。

 このアヤの最後のところでワカ(和歌)の理論が出てくる。ワカ(和歌)を五七調に綴るのは何故かとのソサノヲの命の質問に対してワカ姫は「天地(あわ)の節(ふし)」と答えている。この天地(あわ)とは天地(あわ)の歌(うた)をさす。

 『ホツマ』において天地の歌は日本思想の根幹をなす深遠な思想を含んでいる。1アヤ2ページの固有文字の五七調四十八文字が天地の歌である。

 次に、ワカ姫がソサノヲの命の質問に対してワカ(和歌)祓いの歌が32文字なのに、ワカの歌(和歌)が31文字なのは何故かを聞かれた論を述べるくだりになる。(1アヤ17ページ)

 

・『ホツマ』の歌論

  天の運行は1年が365日で一巡りします。1年を4分し、さらに3分即ち12分すると31日になります。月の運行は30日足らずです。本当は1箇月を31日とします。したがって通常、歌は31文字です。しかし天の運行は後先がかかわって32日になる時があるかもしれません。こういうみだれた時を窺っていて、災難が発生します。これを祓うのは歌の声が余る32文字でなくてはいけません。敷島の大和の国に生れた男子は31日目に忌があけます。女子は32日目です。このように歌の文字の数によって宇宙に応えるのです。大和の国は天の法則に護られており、アワの歌はこれに応えるものです。このようなわけで大和の国はアワの道が一番大切にされるのです。

 これで、和歌が古代日本で国家的に最も重要視された理由がわかる気がする。和歌が宇宙と一体である視点が注目される。

 

・歌の道

 古代日本において「歌の道」は「禊の道」と対をなす行(ぎょう)であり、本来、神道における最重要事項であった。古代神道において、ワカ(和歌)が身を清めるための禊に対応して、心を清めるための道であったなど今では誰も知らない。

 さらに枕詞について重要な記述が『ホツマ』にはあった。国の体裁が整わない前の苦労はマクラコトバの中に歌を引出す種の言葉として残した。

 5アヤの14ページは次のような内容である。

 イサナギの命が禊をし、身を清めることにより国民の暮らしは安定し、マトの教えもますます徹底されモラルも向上した。葦を抜いて田とした多くの村はお米が豊作となった。マトの教えによりアワ国は国の体裁が出来上がった。このイサナギの命が国造りの基礎を築いた。その業績を伝える歌の道にも理解を深めよ。

 国の体裁が整わない前の苦労はマクラコトバの中に歌を引出す種の言葉として残した。たとえば「あしひき」は山にかかるマクラコトバである。同様に、「ほのほの」は明け、「ぬばたま」は夜、「シマツ鳥」は鵜、「沖つ鳥」は鴨および船にかかるマクラコトバである。このアチ(天の霊力、言霊)を夜の枕とすれば、目覚めたとき歌の道を理解できる。また前言葉としてのマクラコトバも理解できる。心を清めるのが歌の道である。

 

・素直な心

 昔から日本では「働かざる者食うべからず」が社会通念になっている。その厳しい掟は古代から確立していたのだ。(13アヤ25ページ)

 欲望からのがれるのは、物を無駄にせず又集め過ぎず、ほどほどの術を身に付けることだ。宝を蔵に満たしても、それは塵や芥のごとく何の役にも立たない。それよりは、心の素直な人がみつかったら、わが子のように取り立てて、愛情をもって皆をそだて欲をすてる方が役立つ。(13アヤ25ページ)

 クニトコタチの命は日本国の初代の神である。更に『ホツマ』の古代暦の記述をもとにして、この時代が今から約3千7百年くらい前と推定される。このような昔、日本には争いなど無かったというのだ。まだ人口が少なく食糧その他一人あたりでは豊かだったと思われる。本来、日本人は素直な性格なのだろう。矛のような武器はいっさい無くて国が治まっていたというのだ。(23アヤ2ページ)

 

・おわりに

 歌の道が心を清める行としての道であり、身を清める禊の道と並んで古代神道の重要な理念であったなど、『ホツマ』からしか窺いしれない。和歌が古代日本において非常に重要視された理由はほぼ理解できたように思う。

 また、素直さが古代日本の国家理念にまでなっていることを知ったのは大きな収穫である。古代人は素直さを守れば全てが旨く進むと考えていた。これは素朴に見えて意外と強力なパワーを発揮できるように思う。