残りの日々を楽しく

そろそろ終活の季節になってきました。残りの人生を前向きに生きていきたいと願って名づけました。

小さき者の幸せが守られる経済へ

浜矩子著「小さき者の幸せが守られる経済へ」2019年、新日本出版社の紹介です。

もう50年くらい前の話になりますが、私が大学へ入学した当時は、経済学はマルクス経済学と近代経済学に分かれていました。マルクスのものは読んだつもりだったのですが、自分の身にはなりませんでした。でもやっぱり、経済は大切だと思っていて、最近は、金子勝さんとか浜矩子さんがyoutubeで時事問題を解説してくれているので、よく聞いています。今回は、浜矩子さんの話です。

浜さんは、経済活動は人間の営みだから、経済活動は人間を幸せにできなければその名に値しないと言っています。大きくて強い者は、その大きさと強さで強引に幸せをつかみ、守り抜くことができるが、小さくて弱い人々は、強大な者のような自助力が備わっていない。だから、小さくて弱い人々を幸せにする人間の営みが経済活動であるとしています。

今のわれわれは、小さき者の幸せを守る経済には到達していない。このまだ到達していないゴールに向かって、われわれは突き進みつつあるのか。また、どの辺まで来ているのか。あるいは反対に、小さき者を不幸に陥れる場所に向かって進行してしまっているのか? 浜さんは、この小さき者の幸せを守る経済について、この本で思いを巡らせている。

浜さんは、経済活動はあくまで人間の営みであり、エコノミストの責務は、政治家や経営者や官僚たちとは一線を画して、その世界の外側から世の中のゆがみや問題点について警告を発することだと言っています。

また、成長経済と成熟経済をはっきりと分けて考えていきます。成長経済とは、戦後の復興期の日本経済、1945年から10年間くらいの段階です。成熟経済は、均衡維持に目配りしながら、過去における発育の果実を上手に味わって生きていくこと。

成長経済にとっては、成熟経済になることが目標です。成熟経済が成長経済化しようとすることは間違っています。既に賢く生きるべき時代に入った経済なのに、威勢よく発育する経済だった時代に後戻りしようとすることは実に愚かなことだと述べています

「心の欲するところに従えども矩(のり)を踰(こ)えず」は、孔子の言葉です。「矩を踰えず」とは、どんな好き勝手をしても、ルール違反をしない、社会的に許されないような生き方にはならないということです。

浜さんは、これが経済活動のあるべき姿と言われています。経済活動においては、人間は「心が欲する所に従」って自分の利益を追求しますが、「矩を踰える」ことは、経済活動が人間の営みである以上許されない。どんなにもうかる事業でも、どんなに大ヒット間違いない新商品でも、それが誰かを傷つけたり、世の中をかき乱したり、環境を破壊したりするのであれば、それらの存在を認めるわけにはいかない。それが経済活動の基本原理だと言われています。

この本は、アエラとimidasに執筆してきたコラムの原稿をもとにしているということで、テーマは盛沢山ですが、どれも上記の基本姿勢が貫かれていて、読んでいてとても納得のいくものになっています。